2020年12月28日月曜日

吉原彼岸花


色々と評判の良かった『吉原彼岸花』プレイしてみた。

吉原随一の花魁『千早』と、彼女を取り巻く男性達との美しくはかなく切ない恋愛模様、
みたいな感じ。

斬新なのは、女性主人公が性技の手練れ、という点。
大体恋愛ゲームとかは、恋も何もかも初めて、みたいな初心な主人公が多いし、
Hシーンにしてもきれいな感じになるような描き方が多い。
ところが、舞台が吉原なだけあって、非常に生々しいし
ちゃんと女性目線で納得できるような行為が表現されている。
世の中にあるエロは大半、男の欲望を満たすだけの浅いものが多いので
お~ここまでリアルな描き方するんだ…と驚いた。

ただ個人的に萎えたのが、このゲームはヒロインの声がない…。
ヒロインの声がないのに、濃厚なHシーンがある…。
ということは…男性が喘ぐわけだ。猛烈に。
いや~…もうすごく萎えた…(;^ω^)
だって、そうなるともう一律言葉攻めしてるのと同じだし
そういうキャラじゃないのに無理やりそうせざるを得なくなってるワケで。
ヒロインが廓言葉で男を挑発するような淫靡なシーンとか
ちゃんと声がついてたら、ものすごくいいと思うのに。
そんなワケで、Hシーンはほぼボタン連打で高速送りしながら見てた…。
(言葉責めばっかりだと、マジでうんざりする)

あと、本当に個人的な好みだけど、PC版では辰吉が攻略できないのが残念過ぎた。
どのキャラもそれぞれ味があるし、別に嫌なキャラとか一人もいなかったけど
姿形とか声(主に声)が好みなのが辰吉だったので。
大体攻略できないキャラが、一番好みのルートだったりするからなぁ…。
越えざるは紅い川のエスタ、薄桜鬼の山崎烝とか。
私が天邪鬼なだけかもだけど。


初回プレイ時は用語や吉原のしきたりを覚えたりがあるので、あまり没入感がなかったりもする。
女郎が、吉原の中の甘味屋とかにちょくちょく出かけたりするので『女郎=籠の鳥』で
妓楼以外の場所にいることができないと勝手に思い込んでいたので、軽い衝撃を受けたのもある。

そして、全ルートプレイし終わってみたけど…。
う~ん…いいのはいいけど、評判ほどには私は面白いとは思えなかった。
スチルも綺麗…なんだけど、しょっぱなに出てくるモブ絵はお世辞にも綺麗とは言えず、
その衝撃をず~っと引きずってしまった…(期待値が上がりすぎてしまった弊害だな)。

あと、仕事に誇りを持っている花魁でありながらその行動はまずいよね、
という選択肢を選ぶことが多いルートとか(;^ω^)
朔夜ルートとか、特に。

一番の不満は、シナリオが短い事。
全体的なシナリオが短いのに、Hシーンが多いこと。
そこは吉原という狭い世界の中の話だから、そうそうイベントは
起こりようがないのでしょうがないところもあるけれど。
(個人的にシナリオが長いのが好物)

もうひとつの不満は、吉原なのにあっけなく足抜け成功すること。
まぁ足抜けに伴うすったもんだとか刃傷沙汰とかあるけど
いや、その程度で足抜け成功しないよね…と思ってしまった。
冗談抜きで、地獄の果てまで追ってくるハズだし。

もちろん、色々と良いところもけっこうあった。

ヒロインが闇落ちして、自分の地位を掻っ攫った女郎を殺すとか、
妾として身請けされた先で、愛を取り戻そうとして本妻の子を殺してしまうとか。
相手が自分を置いて行ってしまったショックで、花魁なのに見境なく男を襲うようになるとか。
そういうのとってもダークでいいよね(*´∀`*)
悲劇の主人公=可哀そうなヒロイン、みたいな形式じゃないのが。

闇落ちはヒロインだけじゃなくて、攻略相手も同じ。
相手は一途に花魁に執着してるので、なかなかに精神的に来そうな凌辱を加えてくれるワケだ。
二人の男で迷った(もう一人を見捨てられなかった)ヒロインのために、
その見捨てられなかった男をペットにしてしまうとか。
背中に虎の入れ墨を持つ男は、ヒロインの全身に蛇の入れ墨を入れた挙句、
座敷牢に閉じ込めてひたすら嬲るとか。

あとは、良いと思えたエンドは2つの心中エンド。
やっぱ吉原が舞台なだけあって、普通のハッピーエンドってどうも嘘くさい気がするし。
女郎って、そもそも年季が明けるまで生きてるかどうかも怪しいワケで。

足抜け時のケガが元で破傷風になったヒロインが、最期にたどり着いた故郷の湖で、
幼馴染の恋人と入水するシーンはとても切なかった。
ヒロインはもう命も体力も残ってなくて。
恋人は、ヒロインが少しでも楽に死ねるようにと首を絞めて意識を朦朧とさせる。
自分は苦しいまま死ぬハメになるけど。

このシーンを見た後は、OPを見るたびにボディブローのように、
じわじわと切なさが増すという作りが、実に憎い。
そうでなくても、OPに出てくる一枚絵は、ため息が出るほど妖しくて美しい。

もう一つの心中ENDは炎の中。
このENDこそ、吉原彼岸花というタイトルのためにあるのが分かる。

よってこのルートは、すべての攻略を終えてからでないと見られない。
真相ルートでもある。

ヒロインによって、過酷な生い立ちと残虐な裏の顔を暴かれた楼主。
その楼主は、ヒロインの両親を死に追いやった人物でもある。
その事実を知った時、ヒロインには愛憎渦巻く気持ちが芽生えるが
それでも子供の頃からずっと守り続けてくれた、愛しい恩人を憎むことができない。
楼主はすべてを終わらせるため、妓楼に火を放つ。
ヒロインは一旦は馴染みの旦那に、燃え盛る妓楼の外へ連れ出されるが、
彼を見捨てられないと、妓楼の中へ戻って楼主に寄り添う。
周りはすでに炎が猛り狂っていて、その様は二人が昔出会った彼岸花の花畑のようだ。
二人は罪人としての生を終え、思い出の日に還っていく。

こちらのENDは、そんなに切なくはなかったけど一番納得のいくENDという感じがした。
吉原という世界の、楼主の狂いっぷりとヒロインへの執着を形にしようとすれば
必然的にこういうENDになるだろう。
やっぱり吉原は炎上が似合うしね(あくまで個人の感想)。

楼主の最初のベストエンドの、一緒に手に手を取って大門を出ていく、なんていうのは、
楼閣の床で見る泡沫の夢であり、現実はそんなに綺麗に終われるワケないよね、と。

そんなワケで、悲恋&バッドエンドが大好物な方には色々と美味しいゲームだと思う。
ただし、PC版よりswitch版の方がいいかもしれない。
スチル追加されてるし、辰吉ルートあるし。

う~ん…switch、買おうかなあ…。
いくつかやりたいゲームできたし…。


2020年12月27日日曜日

Lamento -BEYOND THE VOID-


久しぶりに、ものすごく唐突にまたやりたくなって再プレイ。
以前もやったんだけどね、コレ。

ただしwin7の時に買ったDVDでは起動できず、結局win10対応版を買い直すハメになった。
でもいいんだ、そのくらい大好きなゲームだから。

攻略だの何だのは、いくらでも載せてくれてるサイトさんがあるので、
ここでは感想(ネタばれアリアリ)だけ。
(私も随分、そういうサイトさんにお世話になった。すごくありがたい)

このゲームは言わずとしれたBLゲー。
なので、BLが苦手な人には向かないし、エロやグロが苦手な人にもきっと向かない。
かなりきつい描写もあるしね。
あと、長編小説とか長編の映画とかが苦手な人もきついと思う。
とにかく長いので。とんでもなく長いので。

逆に、大ボリュームのシナリオ大好きって人はこれなら満足できるんじゃないだろうか?
私は普通の長さのシナリオのゲームだと、全く満足できないタチだ。
短い長さのゲームで恋愛要素入ってると、プレイヤーおいてけぼりでいつの間にかくっつくし。

このゲームでとても秀逸だな、と思うのは、とにかく心理描写が丁寧なこと。
主人公がなぜ、相手に惹かれたのか共感ができる。
もちろん、プレイヤー的に好みではない相手もいるけれどそれでも理解はできる。
一人の人間(このゲームでは猫、という種族だけど)が、一人の人間に惹かれ、
相手も主人公に惹かれ、そしてお互いの想いが通じる過程の描写が本当に素晴らしい。

何よりいいのは、実に上手い具合にBL要素や猫要素があることだ。

最初は猫耳のキャラクターと知って、男性向けで量産されてるような、
猫耳つけただけのエロに偏った単純なゲームかと思った。
でもどうやら違うらしいと知って、プレイしてみたらこれがドハマリした。
これは猫耳キャラではなく、猫だ。猫という種族の物語だ。
耳や尻尾は飾りじゃなく、ちゃんと身体の一部だ。

色んな乙女ゲームとかBLゲームとかやってきたけど
どうしても苦手なのは、主人公が守られキャラなヤツだ。
理由もなくちやほやされたり、主人公はなにもできない女の子だったり。
周りをイケメンに仕立てる手法かもしれないけど
そういうのって、プレイヤーとしては実に歯がゆいものがある。

その点BLゲームは、主人公はただの守られキャラではないし、
ちゃんと敵と互角に戦ったり、自分の意見の主張もする。
しっかりとした自分の考えを持っていて、ずるずると流されるようなことはないし、
わざとドジを踏んだりもしなければ、女性キャラが主人公でありがちな
巨乳とかミニスカみたいなあざとい性的アピールもない。

ただ単純に一人の人間としてのストーリーが見たいのに、女性主人公になると、
途端にエロ要素やドジ要素、守られ要素を詰め込まれるのに本当に嫌気がさす。

いや、私は決してエロ要素が苦手なのではない。
(男同士のカップリングが特別好きなワケでもない)
むしろストーリー上、あるハズのエロがないのは不自然で嫌だ。
それは暴力要素も同じ。
清廉潔白なイイ子すぎるストーリーなんて、面白くもなんともない。

ものすごく世界観に合ってるゲームの背景画像。とても美しくて、ずっと見てても見飽きない。

このゲームの主人公はコノエという一人の雄猫。
トップ画像のキャラがそれだ。
剣の腕前はなかなかだし、いざとなれば爪や牙でも戦える。
世界観は、中世的なダークファンタジー。
魔術や悪魔も登場するし、生贄なんていう物騒な風習もある。

ゲームを開始してすぐに、世界は虚ろというものに侵されつつあり終焉に向かっている、
というのが分かる。
猫達は、少しづつ周囲の自然の草木や小動物を触ることができなくなり、
そのせいで食べ物は非常に入手し辛くなり、失躯という奇病のせいで雌は激減し、
それに伴って愛や恋などというものは影を潜め、やがて同胞を贄にして飢えをしのぐ日々…。

もうしょっぱなから重い。とんでもなく重い。
(そういうの、大好物だけどね(≧▽≦))

主人公が、主人公としてのストーリーを始める前から
脇役達がとても重いストーリーを作り上げてくれたりもする。
生贄になる者と、それを見送る恋人、とか。

そういう重さと、後は、主人公や攻略相手の生い立ちの重さ。
これもそれぞれ実にむちゃくちゃ重い。
100%不可抗力的な、どうしようもない重暗さ。
そこには生まれや育ちがどうであれ、明るく強く生きていかなきゃ、
なんていうキレイごとは一切ない。

攻略相手の一人であるライは、小さい頃に親の愛情をまったく感じられずに育ち、
その温もりを生き物の血に求めるようになった。
その狂気はだんだん大きくなってきて、本人の正気を食い破ろうとしている。

別の攻略相手であるアサトは、両親が禁断の関係を持ったせいで生まれたので
村で禁忌の子として忌み嫌われたり、殺されかけたりしてずっと怯えて生きてきた挙句、
いつか必ず魔物に成り果てるという、相当に過酷な運命。

3人目の攻略相手であるバルドは…まぁ、この猫は自業自得というか…。
力が欲しいという自分の欲望を、他人のためだとか言って悪魔召喚して叶えようとしたりして、
言い訳して生きてるダメ親父だけどね…(;^ω^)
他のキャラと違って、内面の醜さみたいなものを引っ張り出されるという点では、
一番きれい事ではないかも…。

個人的に親父キャラはまったく好みではないので、実は嫌々プレイしたという…。
(恋愛的な絡みでは、歳の離れた年上キャラはかなり苦手)

バルドのストーリーは、正直なところあまり好みではなかったけど
ラスボスとのバトルでのライとの共闘は燃えた。
ライとバルドは、敵同士かってくらい仲が悪かったので、そこは本当に感無量だった。
世界が平和になった後の、キャラクターみんなが割と仲良くやっていけてる感は、
このルートでしか味わえないしね。

アサトのストーリーは、もうなんというか、本当に本当に過酷すぎた。
かつてこんなに過酷な運命背負わされたキャラクターがいただろうかってくらい。
アサトはとても純粋で、一心にコノエを慕っていて。
でも想うが故に、いつか魔物になってコノエを食い殺してしまうのを恐れている。
最初はアサトの中の魔物を恐れたコノエも、アサトの想いに触れ、
自分の気持ちが変化していき、アサトがどんな姿でも側にいたいと思うようになる。

過酷なのは二人の運命だけでなくて、魔物のアサトによってコノエの右腕が切断されかかり、
痛すぎて邪魔だからってコノエが自分で切り落としてしまうとか…。
(プレイしてるこっちが痛いよ…)

ラスボス撃破後の、魔物姿のアサトが死にそうだった時に
思わず抱きしめていたコノエの気持ちが痛いほど分かったし、
アサトが元の猫の姿に戻ってコノエの名を呼んだ時は、むちゃくちゃ感動した。

二人で、アサトの故郷に戻って村長と対峙したシーンは、心から「本当に良かったね」と思った。

ライのルートは、事実上のメインストーリーだろう。
一番CG多いし、『闘牙と賛牙の絆』という、このゲームのメイン要素を最も味わえる。
それと、互いを想い合うまでの心理描写が一番細やかだ。

その想い、というのも恋とか愛とかいう単純なモノじゃなくて
いつかライが正気を失う時が来たら、ライが他の猫を殺す前に自分が必ずライを殺す、
という約束で結ばれる関係(絶対にその役目は他の猫に譲らない、と)。
魂で繋がるとはこういうことか、と思えるような。

そのシーンでは、私は思わず息を止めて見入ってしまった。あまりに神聖で美しくて。

そして、その約束が果たされた時は…切なかった。ただひたすらに切なかった。
ここまで相手を求め、そして求められるのならば、それはもう唯一無二だ。
魂だけになってしまったって、二度と離れたりしないだろう。

彼らはラスボス撃破後に、賞金稼ぎのコンビとして生きているけど
そこにはただの闘牙と賛牙ではなく、揺るぎない絆を築いた姿が見える。

メインの舞台である祇沙(しさ)の街。

ただし、どのルートであっても、コノエの残りの寿命はそれほど長くはない、という…。
せっかく想いが通じ合った相手と、これからずっと一緒にいられるようになったのに
その時間がわずかしか残ってないとか、どんな罰ゲームなんだ。

そもそも主人公も相当過酷な運命背負って生まれて過ごしてきているし
攻略対象キャラに会うまでにも、プレイしてるこっちが寿命削られそうな
きっつい道のり歩いてて(常に追われて殺されかけて)、
ルートに入ったらさらにきつくなるんだもんなぁ…。
エロシーンで喘いでるより、苦痛に悶えてるシーンの方が圧倒的に多いくらいだ。

蛇が4匹も喉を通るとか、私なら発狂するね、確実に。

BADエンドもかなりエグいし。
魔物になったアサトに、嬲られた挙句に生きたまま食われるとか、
悪魔のフラウドが、ライの眼前でわざとコノエを犯すとか(両者精神崩壊待ったなし)。
いや~、フラウドのバッドは本当にえげつなかった。
BADエンドと見せかけたエロエンド、みたいなのも多いのに
見てるこっちが精神崩壊しそうなきっついBADなんて早々ないと思う。
この場合のエロ要素とか、食われる恐怖をさらに煽るだけだ。

このゲームで秀逸なもう一つの要素が音楽だ。
文句なしに素晴らしいし、最初にゲームをプレイした日からず~っと定期的に聞いてる。
ライとバルドのBADENDでかかるWhen The Endとか、アカペラで歌えるくらい聴いた。
っていうか、BADENDの曲が素晴らしいとか、贅沢すぎだって。
殺し合いENDとか、凄惨な終わりのハズなのに、それも二人の絆なのだと納得できてしまって、
それが切なく美しく感じてしまう。
つくづく音楽の力の凄さを感じる。

その曲以外にも、図書館でかかる神秘的な曲も好きだし、
悲劇的な場面でかかる切ない曲も本当に美しくていい。
絵やストーリーやキャラクターが良くて、さらに音楽がいいなら
それは惹き込まれない方が無理だ(≧▽≦)

当然いいところばかりじゃなくて、ストーリー的に、デウス・エクス・マキナ的な展開があって、
心理描写の細やかさに比べたら、場面運びが少し強引だった点がちょっと残念だったかな。
あと、ラスボスとのバトルのストーリー展開がほぼ同じ、とか。

でも、そんなのは些細なことだ。
私にとっては。

こういう、主人公や他のキャラの幸せを願いたくなって、
何度もその世界に浸りに行きたくなるような、
味があって骨のあるストーリーゲームをもっとやりたいワケだ。
乙女ゲームでもBLゲームでも他の18禁ゲームでもいいから。

というワケで、これから吉原彼岸花、というゲームをやる。
これもなかなか涙腺にきそうなストーリーのようなので楽しみだ(*´∀`*)